福島県 玉川村で出会う、イロイロなコト。

旧須釜中学校にオープン! 買い物困難者に“おしゃれ”を届ける「ひつじ百貨店」

2021.02.28

2040年、医療の進歩などにより、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は35.5%に達すると言われています。そんな中、社会課題のひとつとされているのが「買い物困難者」。小売店の廃業や免許返納などで買い物に行けず、日常生活に不便を感じる方々のことです。

 

そんな買い物が難しい方のために、洋服や日用品を販売しているのが「ひつじ百貨店」です。なぜ「ひつじ百貨店」を立ち上げたの? どんな想いで運営しているの?などなど、代表の関根祐嗣さんにお話を伺いました。

 

高齢者がおしゃれを楽しんだって、いいじゃない

 

――まず、なぜ「ひつじ百貨店」を始めることになったのでしょうか?

 

関根さん:行政や社会福祉協議会、村民代表の方々などが参加し、子どもから高齢者まで、住み慣れた玉川村で安心して暮らしてもらうために“どんな生活支援やサービスを行ったらよいか”を話し合う「もちもたの会」がきっかけです。当時、私は社会福祉協議会の職員として参加していました。話し合いをするうちに、「買い物が難しい高齢者の方々を手助けしたい! 自分でやろう!」と熱い気持ちが芽生えて、「ひつじ百貨店」を起業することにしたんです。

 

▲代表の関根さん。他2名のスタッフと共に運営している。

 

――そういう経緯だったんですね。でも、なぜ、洋服や日用品の販売だったんですか

 

関根さん:食料品の訪問販売は、すでに大手をはじめ色々なところでやっていますよね。でも、洋服や日用品の訪問販売ってないなぁと思って。特に洋服は、だいたい家族が買ってきてくれたものを着る方が多いんです。

 

でも、訪問販売があれば、自分で好きなものを見て選んでいただける。「高齢者がおしゃれを楽しんだっていいじゃない」という想いで、洋服や日用品を扱うことにしました。

 

 

関根さん:2020年3月の開業当初は、福祉施設などに出向いて販売を行っていました。みなさん、とても楽しそうに買い物をしてくださって、好評でした。でも、その後、新型コロナウイルス感染拡大によって、施設に出入りすることが難しくなってしまって。

 

▲アルコールやマスク、おむつなどの日用品・介護用品も販売している。

 

関根さん:とはいえ、洋服を仕入れてしまっていたので、何とかしないといけない。そこで、村内の公民館や集会所で販売したり、インターネットの販売をはじめたりしました。ただ、やはり私たちが手助けしたいのは公民館や集会所へも自力で足を運べない方々。

 

本当に手助けしたい方に、サービスを届けられない……。そんな葛藤を抱いていたとき、役場の方からここ(コワーキングスペースたまかわ)の話を伺い、実店舗をオープンすることにしました。

 

▲旧須釜中学校にオープンした店舗の入り口。中を覗くと「どうぞ、見ていってください」と関根さんが優しく声をかけてくれる。

 

ただ“買う”だけじゃない、“交流の場”にしたい

 

――ここは、元々なんの教室だったんですか?

 

関根さん: ここは、美術室だったんですよ。最初入った時は、黒板もあったし、油絵具があちこちにあって、どんな店舗になるかイメージがつきませんでしたね(笑)。ただ、備品は使って良いとのことだったので、図書室のカウンターを持ってきたり、家庭科室から試着室を持ってきたりして、なんとか形になりました。正月中もずっと壁を塗っていましたよ(笑)。

 

 

 

▲アクセサリー入れには「数学科」の文字。

 

――この場所(取材に使わせていただいたテーブル)は、交流スペースですか?

 

関根さん: そうです。なんかこう、休まる空間にしたいなぁ、と思ったんですよね。買い物に行けないおばあちゃんから連絡もらって、お迎えに行ってここに連れてきて、「さぁ買ってちょうだい」っていうのは、違うなと思って。せっかくここに来たなら、近隣の人たちとおしゃべりすれば生活にハリが生まれると思うんですよ。

 

▲交流スペースのテーブルも、旧須釜中学校の備品。所々刻まれているキズが、どこか懐かしい。

 

関根さん: 買い物に行けない方って、自分の家の庭先まで、とか、もっと行けたとしても隣の家くらい、なんていう人も多い。交流する人も、限られてきます。そういった中で、ここに来ていつものコミュニティとはまた違う人たちと交流をして、心休まる場所になってくれたらなぁ、と思っています。

 

▲店舗を訪れたお客さんには「コーヒーいかがですか?」と声をかけるようにしてるそう。

 

若者と高齢者が、いっしょに集える場に

 

――今後、こんなことがしたいなぁと思っていることはありますか?

 

関根さん: この場所(コワーキングスペースたまかわ)は年代関係なく様々な人が訪れるので、実店舗をオープンするにあたって若者向けの古着も扱うようになりました。少しずつですが、若い方も訪れるようになっています。

 

▲有名ブランドの洋服も取り扱っている。

 

関根さん: 古着屋さんって、あまり高齢者向けの服は取り扱っていませんよね。一方で、婦人服や高齢者向けの洋服を扱っているお店には、若者向けの古着はない。うちは、両方が置いてあります。

 

▲高齢者が歩きやすいシューズも販売。

 

関根さん: たとえば、お孫さんがおばあちゃんを車に乗せて連れてきてくれて、「これどうかな?」「あっちも似合いそう」なんて買い物を楽しむことができるんです。そんな環境って、あんまりないんじゃないかなぁと。仕入れる服や発信を工夫して、世代を超えていっしょに買い物を楽しんでもらうような場所にしていけたらな、と思っています。

 

 

 


 

■ひつじ百貨店

 

[住所]石川郡玉川村南須釜奥平290 コワーキングスペースたまかわ1F(旧須釜中学校)

[TEL]090-9030-4498

[HP]https://hitsujihyakkaten.jimdofree.com/

[Instagram]https://www.instagram.com/hitsujihyakkaten/

[取り扱い商品]紳士・婦人向け衣料品、高齢者向け衣料品、日用品、介護用品、古着、雑貨・季節商品など

[事業内容]店舗販売、イベント販売、訪問販売、EC販売

[サービス]

◯お客様送迎サービス

お買い物を希望するお客様を自宅から往復無料送迎。自力で外出することが困難な方におすすめです。

◯無料配送サービス

当店やイベント等で商品をお買い求めいただき、運搬が難しい場合は無料で届けてもらえます。

◯交流スペース提供

地域のみなさんが気兼ねなく時間を過ごし、交流していただける場として、ひつじ百貨店の店舗を提供。

◯お買い物アドバイス

介護関連の資格を持つ販売員が常駐しているので、ご希望の方に衣類選びや介護のアドバイスを行います。

 

※サービスの詳細等は、ひつじ百貨店へお問い合わせください。